
2024年度は「音読のすすめ」
以下の5つをテーマとし、2021年度から5年間かけて活動していきたいと考えています。
今年度の活動目標は「音読のすすめ」です。
活動の5つのテーマ
□センス・オブ・ワンダー (2021年)
□ことばと生きる (2022年)
□ことばを食べよう (2023年)
■音読のすすめ (2024年)
□絵を読もう (2025年予定)
今年度のテーマ「音読のすすめ」に寄せて
音読のすすめ
絵本館に関わるようになったとき、私は絵本のことを何も知りませんでした。幼いころに読んでもらった記憶はあっても、それはもう遠い過去の話です。新しい絵本のことは何もわからない。
スタッフが開館に向けて忙しくしているのを横目で見ながら、私は勧められた絵本を片端から読み始めました。6500冊からスタートした絵本館の絵本の、せめて10分の1ぐらいは知っておきたいと思いながら。『あしながおじさん』の主人公風に言えば、30㎏ほどの絵本は読んだでしょうか。面白いとは思っても、心から楽しいと思う余裕のない読書でした。
やがて開館。集まってくれた子どもたちを前に、ボランティアが紹介した『はらぺこあおむし』や『わたしのワンピース』を、子どもたちの後ろで聴きながら、私は不思議な感覚を味わっていました。2冊とも、私が猛スピードで読んでいた絵本です。それはそれなりに面白かったけれど、でも次の絵本を手に取ったときには忘れていました。それが、読んでもらうと違うのです。言葉がひとつひとつ粒だって届いて、それに合わせて絵が動くのです!
以来、私は1人で絵本を開くときも声を出して読むようになりました。目で追う文字が、声を出すことで生き生きと動き始めるのが分かって楽しくなったのです。
西欧では、音楽会に詩の朗読が含まれたと聞きます。確かに、人間の声という楽器を通して届く言葉は、そのリズムと抑揚で、人の心の奥深くに響いていきます。言葉が、意味だけではない深さを持つとされるゆえんです。
好きな詩や文章、絵本を声に出して読んでみる。時間やAIとのつき合いに疲れた心には、そんなひとときが大切なのではないでしょうか。
投稿のお願い
今年は、「音読のすすめ」をテーマとして、月に1回、小松市空とこども絵本館のスタッフとメンバーそれぞれが、声に出して読んでみたい絵本をご紹介していきます。
みなさんにとっての声に出して読んでみたい絵本は何でしょうか。その絵本を選んだ理由も添えてぜひとも投稿をお願いいたします。

『さくららら』
升井純子/文 小寺卓矢/写真 (アリス館)
さくら前線の話題になると、「ようやく」とか「もう、すでに」とか人の都合で開花のタイミングをあれこれ言ってしまいます。
北海道のさくらちゃんは、4月の雪の中
「わたしはいるよ」
小さなつぼみをのぞかせます。
5月、「もう起きてるか?」みんなが言います。「わたしはちゃんとおきてるわ」
「あれっ じんじん ほかほか」「じんじんほかほか」「じんじんほかほか」
「あ! わたしさきました」
「わたしがさく日は わたしがきめる」
帯にも書かれたこの言葉をバックにあふれんばかりのさくらのはな。
「ことしのわたし どうでしょう」
出会いと別れ、希望と不安の入り交じる春の日はさくらちゃんのこの言葉を借りて背すじを伸ばしてみようと思います。
「さくら らら
さく ららら」
ら・ら・ら 声に出すとちょっとむずかしい。舌をタンタンタンと鳴らすのは気分を揚げるおまじない。
背の高い木々の下、空に向かって「これがわたし」と咲く、さくらちゃん。誰の都合でもなく自分のペースで、その時がきたら咲く、そんな自然の一場面をみせてくれる一冊です。
(松コレメンバー K・S)