松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
まず家庭で本を手にすることから
まず家に言葉があるってこと、 そして、その言葉を 幼稚園や保育園、小学校や図書館で たくさんの人が共有する ーそういう心を ぜひ考えて行っていただきたいと思います。 集団生活の中での読み聞かせは 「絵本の精神」「絵本の力」が 子どもの中に深く入って行かないんです。...
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子どもが知らない言葉は教えない
意味は 分からなくても 前後の関係で だいたい意味が ニュアンスが 読み取れるんです。 だから 子どもが 知らない言葉は別に教える 必要ないんです。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
昔話は自分の中の物語が見える
昔話は、 言葉を覚えて語るんじゃなくて、 その物語の世界が ちゃんとありありと見えるから、実感が湧いてきますから、 それを言葉にしてる。 ただテキストを読むんじゃなくて、 まず自分が物語を読んで、 自分の中にその物語の世界を 想い描いて共感できれば、...
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土地言葉が失われると
その地方の 土地言葉(方言)が 失われることは 地域社会のくらしや 伝統文化が失われ 住民の気分の豊かさや ぬくもりや特質が失われ 日常生活が貧しくなります。 そして 過去と現在が見失われ 未来も養われなくなります。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
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家庭に本がある環境を
私が月刊絵本を作っているのは 「家庭に本がないとだめだ」 というふうに思っているからです。 家庭に本があると、繰り返し繰り返し読む。 子どもが 喜ばなくてもいいです。 1年ほど経つと、 去年喜ばなかった本が、 すごく喜んだりすることがいっぱいあります。 その時その時で、...
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学校教育で一番肝心なこと
学校教育は、教えることばっかりで、 一番肝心な「命をもらった」 「体をもらった」「言葉をもらった」 ーそれが家庭の土台になってるんだということを、 小学校で子どもが気がつくように、 先生が教えるんじゃなくて 言葉で語りかけられなきゃだめです。...
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絵描きさんが物語を絵でどう表現するか
物語をどれほど絵描きさんが 読めるかということが、大きな課題です。 翻訳者が物語をよく読めなければ 翻訳ができないのと同じように、 絵描きさんも 物語をほんとに読み取り、 物語を自分のものにして、 自分の中で繰り返し繰り返し いろいろ想像して画面構成をしていく。...
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日本語の使い手
最近は、 日本語の使い手が とても少なくなりました。 私が 知っている範囲では 石井桃子さんと 瀬田貞二さんが 最高だと思います。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
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赤ちゃんの生きる力になる
お母さんのしあわせが 赤ちゃんの 生きる力になるのです。 赤ちゃんのしあわせは お母さんのしあわせにかかっています。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
言葉の喜びを共有すると…
言葉の喜びを 共有すると 読み手の言葉が 子どもの中に 深く入り込んでいく。 だから食べちゃう。 そうすると 口から出てくる。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
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言葉を体験して覚えると心が育つ
家の中でご飯を一緒に食べるなんて、 とっても子どもにとって 言葉の良い体験なんです。 子どもが耳から聞いてる 言葉の一つ一つに、 自分の中でいろいろ感じたり、 考えたり思ったりしている。 そして、「自分の心」を育てているんです。 そういうことを...
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豊かな言葉を手渡していく
人間てのは、 一日も言葉なしには生きていけません。 朝から晩まで言葉です。 言葉に育てられて生きてるんですよ。 私たちの「命」は言葉にあるんです。 ですから、 もっともっと、 その豊かな言葉を 子どもにちゃんと伝えていく。 また、手渡していくことを 考えなければいけない。...
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人間の感性をとらえた物語と挿絵
ビアトリクス・ポターは、 人間の本質、人間性みたいなものを 豊かに感じることができる人で、 それを子どもに伝えようとして 書いてるわけですから、 目にみえるように生き生きと書いてる。 写実的でしっかりとした挿絵で、 子どもに本当のものを見せる。...
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本を開ける運動
子どもは 絵本を開ければ 絵が出てくるんですから 本を開けるという運動です。 体を動かさなければ 言葉も出ません。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
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学校に入るまでの日本語の体験が弱い
学校に入るまでの 日本語の体験が 今とても弱くなっている。 日本語そのものが貧しくなっている。 テレビの影響が強いですから 機械語で育っています。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
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聞いて感じて考えて思い描いて
言葉は 聞いて、感じて、考えて、思い描いて というふうに発展して行きますと 自分の中に 生き生きとした世界が見えてくるんです。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
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大切なのは絵本のテキスト
日本語として 「質が高いかそうでないか」ってことを 見極めないといけないんです。 絵本は 絵だけではないんです。 今特に大切なのは 「絵本のテキスト」です。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
「声の文化」があって「文字の文化」は成り立つ
言葉をもっと自分の中に豊かに蓄えないといけない。 そこで一番大切なことは 「人の話を聞く」ってことです。 本を読むってこと以前に、人の話を聞く。 本当に言葉を自分の中に 身につけようと思いますと、 「聞く」ことが第一。その次が「話す」。...
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演ずるより普通に読み聞かせを
しっかりとした文章で 書いてあれば ごく普通に 読んでやった方が いいんではないか。 演ずるんではなく 読むだけの方が 私は好きです。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ り
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
「奈良絵本」の文化と伝統
日本には 「奈良絵本」というのがあって、 重要文化財になっています。 残念ながら、 明治維新の時と敗戦の後、 海外に流失してしまいました。 日本のものが 海外に流失してしまっていることは、 マイナスの面もあるけど プラスの面もあるんです。 ヨーロッパの...
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空想の中に超真実が語られている
「うんとこしょどっこいしょ」 子どもは、意味は分かりませんけど、 2回目ぐらいになりますと、 この掛け声に非常に興味を持つんです。 3回目ぐらいになりますと、 自分でも「うんとこしょどっこいしょ」って言うんです。 それが終いになると、 幼稚園や保育園の場合は、...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
お年寄りが生きがいを感じる
お年寄りの方で 自分が読んでもらった時 子どもに読んでやった時の 喜びってのが蘇ってくるんです。 そうすると 生きがいみたいなものを感じる。 「ああ、生きてて良かった」って。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
想いを巡らす読書を
読書は、 文字を読むだけではだめです。 字を読んで、言葉を読んで、文章を読む。 そこまでは、識字力でできます。 しかし、それは読書ではありません。 その先が読書です。 言葉が表現している世界に どれだけ深く入り込んでるか。 言葉を表現した人の世界がどういう世界か。...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
それぞれの国の音の響き
日本語には 日本語の調べっていうのがありますし それぞれの国の言葉に それぞれの国の音 耳に聞こえる時の 音の響きがあります。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ
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良い日本語に翻訳されてこそ定着
内田莉莎子さんの日本語訳は 訳されているんじゃなくて ほんとに 日本の子どもたちに語るという気持ち。 おじいさんは 明治時代の文豪の内田魯庵先生で ドストエフスキーを 最初に日本に紹介された方です。 翻訳は 日本語が勝負ですから 日本語が良くなければ どんなに良い本でも...
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機械語では「聞く力」が養われない
体を生き生きと 動かすほどの力が 言葉にはあるんです。 それが今の子どもたちには、 そういう体験がない。 なぜか。 「機械語」だからです。 機械から出てくる言葉は、 人間の言葉じゃありませんから、 気持ちが ほとんど通じて来ないんです。 テレビの言葉は、...
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親から子へ語り伝える
子どもたちが家庭で、 お父さんやお母さんの親密さや、 あるいは家族や隣近所があればいいですけど、 本当にお付き合いがなくなってしまいましたから、 「言葉」や「生活」がない。 だから、子どもが育たない。 「語り伝える」ってことが、 今一度非常に大切です。 子どもに語ったり、...
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幼年期から世界の物語体験を
各国が いろんな文化を持っていますから それを伝えて、 できるだけ幼年時代から 日本の子どもたちが受け止めて 「物語体験」をしていく。 それが、 私の2番目の編集方針の一つです。 グリムの昔話の絵本は、 日本の昔話とは 全く違いますから、 子どもたちが見た時に 教えなくても...
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子どもは物語がなければ満足しない
しっかりとした物語性と、 その物語を絵で しっかりと表現することが 絵本の生命です。 大人は 鑑賞するってこと、 見るってことで満足しますけど、 子どもは 見るだけでは満足しません。 そこに物語がなければ、 子どもは 絵本を見る時に満足しないんです。...
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命を支える言葉を母親からもらった
小学校1年生のために作った 『日本語の教科書』があります。 私は 「国語」という言葉は使わないんです。 なぜ「日本語」にしたのか。 私は 「言葉は母親からもらったんだ」 ということをとっても強く思う。 と同時に、もっと大切なもの、 「命」をもらった。...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
読み継がれている本を選ぶ
皆さんが 絵本を子どもに 読んでおあげになる時に、 もし どういう本を選ぼうかと お思いになるんでしたら、 現在店頭に出ている 新しい本よりも、 ずーっと読み継がれている本から 選ばれるといいと思います。 「松居直コレクションプロジェクト会報」よ
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絵巻物で物語を語る
私の編集方針の一つに 「日本の絵で物語を語る文化を 次の世代に伝えたい」というのがあります。 そのために、 絵巻物の手法を徹底的に学んで、 絵本の表現に活かすよう心掛けてきました。 12世紀、13世紀から 「絵巻物で語る」という文化と芸術を 日本は確立しています。...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
目で見えるようにイメージが働く
子どもの絵本は ストーリーが分かれば 意味が分かれば いいってもんじゃありません。 子どもの中で もちろん その意味が分かって ストーリーも分かって それが 目に見えるように 子どものイメージが 働かなければだめなんです。 子どもの本を読むようにしていただきたい。...
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精神的・文化的に豊かな時代に
20世紀が終わった時に私が感じましたのが、 20世紀は 「物とお金の時代」だったということでした。 21世紀は 「精神的に豊かな時代」「文化的に豊かな時代」を 作って行かなくてはいけないと思います。 物とお金には命がない。 命が大切にされてない。 命は目に見えません。...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
ふと世界に入り込むのが読書
最近は、 大人の方も ファンタジーをよくお読みになる。 でもよく見てると、 ストーリーを読んでらっしゃる。 子どもは、 ストーリーの中に書かれている 不思議さがいい。 そこへ入って行く。 読書してるんじゃない。 物語体験をする。 文章を読み、 その文章が表現している世界に...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
多文化主義をしっかりと伝える
これからの日本は、 いろんな民族の文化と 出会うことが多くなりますから、 「多文化主義」ってのものを しっかりと考えて 行かなければだめだと思います。 多文化主義を 見事にやっているのは、カナダです。 カナダにいるそれぞれの民族の子どもたちのために、...
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日本語の調べを活かした言葉に翻訳
デイック・ブルーナーの本の 『うさこちゃん』。 「うさこちゃん」て訳されたのは石井先生です。 オランダ語と英語の違いをちゃんと見分けて、 オランダ語で「ネインチェ」という言葉を 「うさこちゃん」という「日本語の調べ」を 活かした言葉に訳されたんです。...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
「耳から聞く」と大きな力に
読んでもらう 「耳から聞く」ってことは 子どもにとって 言葉の体験としては 学校で字を習うとか 教えられるとかっていうよりも 大きな力になるんです。 「松居直コレクションプロジェクト会報」より
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
本があるのが当たり前という家庭を
本というものが 自分の生活の中にある という家庭の状況を作っていただく。 言葉大好きになって 本大好きにならなければ 読書力は育たない。 本というものが あるのが当たり前だというふうになった時 子どもの中に本が定着していく。 「松居直コレクションプロジェクト会報」より
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
ものを自分たちの目でみる
現在、 映像に取り囲まれた生活に 子どもたちはいます。 一番考えてやらなきゃいけないのは、 「ものを自分たちの目で見る」ということ、 見せられるんじゃなくて 自分の目で見るということです。 そのためには、 自然だとか生活だとか、 子どもたちが...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
「見せる絵」ではなく「語る絵」を
絵本の絵っていうのは 「見せる絵」ではありません。 「語る絵」です。 でも、最近の絵本は絵を見せるだけで、 物語はちっとも伝わらないってことが多いです。 絵を見た途端に物語は忘れてしまうみたいな、 物語の印象が残らない。 日本の60年代、70年代の絵本というのが、...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
日本語の調べや響きを伝える
大人は、 だいだい子どもに 言葉を教えようとします。 特に、意味を教えようとします。 そうじゃなくって、 言葉の一番本質的な 「調べ」だとか「響き」だとか、 そういったところが伝わらないと気持ちが伝わらない。 生き生きとして来ないんですね。 ですから、 絵本は...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
文字には書いていないことが絵にあふれている
絵本の中には、 文字になってしまっている 「言葉の世界」と 「絵の言葉の世界」と2つの世界がある。 それをしっかりと受け止めていかないと、 子どもの「絵本体験」はできないんです。 耳から入ってくる言葉と、 目で見る言葉とが重なってる。 全く一致してる部分もありますけど、...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
自分の声で語りかける
子どもたちに 「本を読んでやる」と考えないで、 「自分の声で言葉を語りかけていく」と同時に、 「絵を読ませるように本を開けていく」 ことをやっておりますと、 子どもは、 言葉の面白さとか 言葉の力とかを 理屈を超えて体験できる。 やがて大きくなって、...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
豊かな言葉で豊かな心を
絵本は 人間の心に 非常に関わりがあり 人間の心を豊かにする。 なぜ心が豊かになるか。 言葉が 豊かになるからです。 素晴らしい言葉ってのは、 人間の気持ちを刺激して 人間の気持ちを生き生きとさせる。 そこに喜びがある。 これが生きる力です。...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
どれほど生きる力を持っているか
言葉があるから 人間は 生きていくことが出来るんです。 その生きる力の 言葉が 今どんどん衰えて 行ってるわけですから 子どもたちが どれほど生きる力を持ってるかは とても疑問です。 「松居直コレクションプロジェクト会報」より
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
読み手と聞き手の間に橋を架ける
本を 子どもが喜んだ時には、 子どもの中に一番残るのは 「読み手」なんです。 絵本は 「作者」のものではありません。 絵本は 全部「読み手」のものです。 物語が心の中に残ってる。 これが 絵本の意味なんです。 絵本は 「読み手」と「聞き手」の間にある...
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
外国の子どもたちに文化体験を
日本が いつも輸入する ばっかりじゃなくて 日本の文化を知ってほしいと 文学だとか絵画だとか現物を 外国の子どもたちに 子どもの時に 体験してもらう地盤を 作っていくことが とても大切だと考えていました。 「松居直コレクションプロジェクト会報」より
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
子どもの心を躍らせる言葉
子どもは 言葉と絵の方から 自分の中で イメージを膨らませていって 自分で読んでます。 声には出しませんけど 自分で読んでます。 それが 想像力というものなんで それを大切にする方が いいんじゃないかと思います。 「松居直コレクションプロジェクト会報」より
松居直コレクションプロジェクト会報|松居先生のことば
外国の本格的な物語絵本を翻訳
「こどものとも」を編集している頃から、 私は外国の絵本を 翻訳して出版しなければ、 日本の絵本界は 発展して行かないんじゃないか と思うようになったんです。 そして、外国の絵本が、 日本の絵本にはとっても及ばないほど 素晴らしいものがたくさんあるってことを...